インディー(52)

そのまんなかに積み上げられた木箱の中で、マスイズミ、モンラシェ樽仕上げは、静かに眠っていた。


「少しずつ開けて、変化を追っているんですがね・・」

「突然、海藻のニュアンスが出たりして、なかなかおもしろいんですよ」
とオヤジ。


その語り口から、相当の酒好きと見た。


もの静かなノンベエ。


「それじゃ、3本、買って帰ります」


日帰りの旅は、慌ただしい。


富山の街を後にして、魚津へ。

海沿いを走る。

黒い海。


玄海灘も、こんな色をしていたな?と、ふと思う。


蜃気楼


蜃気楼は、どうも、今日は、ハズレのようだ。


蜃気楼が出たらサイレンが鳴るというおもしろい街。


おおさきさんの店に寄る前に、黒部名水ブタを生産している木島牧場のブタ肉を販売しているという肉屋へ。

なんの変哲もない肉屋。


余裕があれば、木島牧場に寄るのが私の旅の常識。

どこに行っても、本当に旨いものにでくわすには、生産現場に直接行くのが一番!


あらかじめ予約してあった
肩ロースとバラ肉を買い、車に積んで、最後の目的地、おおさきさんの店へ。


魚津駅前のおおさきさんの店は、すぐに見つけることができた。


「はじめまして!」

「いらっしゃいませ」
と奥さん(たぶん)


「お電話を入れていました舞さんのファンの・・」

「あぁ、いらっしゃいませ。遠いところをご苦労様です」


「ちょっとお待ちくださいね」
と奥に消えた。

現れたのは、牛乳瓶の底のような分厚いメガネをかけたおやじさん。


「やぁ、いらっしゃい!はるばるとご苦労様でした」
元気のいい語り口


「これ、おみやげです。ぼくがローストしたオリジナルブレンドです!」

とコーヒー豆の入った瓶を差し出す。

「こちらは、すみませんが、舞さんのご家族の方に差し上げてください。」

「きっとご満足いただけます」

コーヒー豆に関しては強い自信を持っている。

いい豆を選んで
最新の注意を払いながら炭火でローストして

密閉度の高い容器に入れて保存し

ローストしてから3日後くらいに

手動式ミルで挽いて

シルバースキンを吹き飛ばし

経験と知識に裏打ちされた手順を守って淹れれば、


絶対に、絶対に、香り高い、おいしいコーヒーになる。




© Rakuten Group, Inc.